作業効率を向上させるタスク管理システム


概要
規模の大きいタスクにおいて具体的に何をすればよいのかわからず先延ばしにすることや締め切りまでの時間に余裕があることから先延ばしをすることなどを防ぎ,タスクに着手しやすくし,早期に着手することを目的としている.
タスク管理においては,与えられたタスクが規模の大きいものであった際,私たちはタスクをいくつかのサブタスクに分割して管理するということを行っている.しかし,サブタスクへの分割をどの大きさまで分割することが,着手しやすく,全体量の把握や手順の把握のしやすさにつながるかは明らかとなっていない.
そこで本論文では,タスクの遂行時間を見積もることができるかどうかがタスクを分割する指標として効果的であると考え,システムの実装及び検証を行った.
その結果,タスクの全体量の把握はしやすかったと回答した参加者が多くいたが,着手しやすかったと回答した参加者は 3 割以下であったが,着手しやすいとはあまり思わないと回答した参加者は遂行時間の見積もりができなかったタスクが 7 割程度あった.このとき遂行時間を見積もれなかったタスクは経験値を積むことでしか,見積もることができるようにならないと考え,着手のしやすさではなく,着手の早期化に焦点を当て検討した.
そこで,締め切りが設定されたタスクへの着手と完了の先延ばしをなくし,早期化を促す方法として,設定されたマイルストーンの日時よりも早く着手・完了するとポイントが獲得できる共通タスクに取り組むユーザ間での競争を促すタスク管理ツールを提案した.
システムを利用した実験を行った結果,他者の進捗状況によって着手の先延ばし,早期化どちらの行動も取ろうと思わなかった参加者は 1 人だけだったため,他のユーザの進捗状況を共有し競争することでタスクの着手時期が変化する可能性が示唆された.しかし,他者が全く進捗していないときに着手を後回しにしようと思った参加者がいたため,競争を行うグループは進捗が自身よりも早いと思われる参加者で形成する必要があると考えている.また,完了タイミングについては,サブタスクの完了全てではなく,タスクの完了のみで競争を行っていたところ,締め切りを過ぎることはなかったがマイルストーンよりも早期に完了したのは 1 名のみだった.これは締め切りを守ることが早期に完了するよりも優先されていることが原因だと考えているため,早期の完了を重要視させる方法を導入する必要があると考えている.

メンバー

学会発表
・荒井健太郎, 小林稔. タスクの締切期限よりも早く終わらせることを促すタスク管理ツールの提案. 信学技報, 2018, Vol.118, No.222, p.37-41.
・荒井健太郎, 小林稔. タスクの遂行時間に着目した適切なタスク分割支援手法. 研究報告グループウェアとネットワークサービス, 2018, Vol.2018-GN-103, No.39, p.1-6.